日本音楽即興学会(JASMIM)2010大会報告



【発表者】 ユミ・ハラ・コークウェル / Yumi Hara Cawkwell
University of East London (イーストロンドン大学)講師、作曲家・即興演奏家


【要旨(大会抄録記載)】
私はこれまで和楽器と西洋楽器の両方を含むアンサンブルのために何度か曲を書いたことがあるが、その主な留意点は和楽器の音色をその他の楽器とどう折り合いをつけるかということであった。それは武満徹が「琵琶を一つポンとやると、ぼくが望んでいないような世界まで一緒に顔を出してくるってことがあるんですね」(武満1981:21)と言ったような、和楽器の音色そのもののパワーというようなものがあるからである。しかし作曲の場合は実際に曲を書いていく過程は自宅で1人で行うものであるから、音程やリズムの選択について楽器が演奏できる範囲にある限り問題が生じることは特にない。その一方、音楽全体としては当然作曲家の想像力、創造力の範囲内に留まるということになる。


それでは即興演奏においては和楽器と西洋楽器の共演にはどのような留意点があるであろうか。上記の武満同様、韓国在住の即興音楽家佐藤行衛が「民族楽器の人はズルイ、いくらぼくらががんばって弾きまくっても、音一発でその世界になっちゃう」(佐藤2009)と言っているように、やはり音色のパワーの問題はあるであろう。作曲と異なるのは音楽的要素の選択判断が1人のものではなく、演奏中に直接お互いの音を聴きながら自分の出す音を作っていくという協同作業のプロセスを通して集団的に行われるということである。それならば作曲の場合よりも更に深い和楽器と西洋楽器の混成音楽が生成されるであろうか。


このたび2010年7月10日に東京のフライングティーポットにて、和太鼓と非和楽器のデュオ3組が即興演奏を行った。和楽器は和太鼓のみというのは、まず音色に関して他の和楽器よりは特殊性が低いであろうと考えられることと、音程の問題がひとまず排除できることから、非和楽器と融合されやすいのではないかと考えたからである。私にとっては初めての和楽器との即興演奏ということになった。


参加ミュージシャンは、ユミ・ハラ・コークウェル(Key, Vo)+細谷一郎(和太鼓)、塩島光弘(E.Gt)+石坂亥士(神楽太鼓)、MEW(Perc)+Wave Drum(辻田浩之)(和太鼓)


細谷一郎はもともと現代音楽とロックをやっており、Wave Drum(辻田浩之)はロックドラムから出発し、石坂亥士は高校の部活動の和太鼓から始めて神楽師となったそうである。対する3人は主にクラシックとロックがバックグラウンドで特に邦楽の専門的なトレーニングは受けていない。当日の演奏の動画をご紹介しながら主にリズムの問題について分析考察を加えたい。


・武満徹(1981) 『音楽の庭、武満徹対談集』 (新潮社)
・佐藤行衛(2009)私信