【発表者】
若尾 久美 / Kumi WAKAO
mesosticsレーベル、音楽家
【要旨(大会抄録記載)】
五線によらない記譜法、図形楽譜(グラフィック・ノーテーション)が登場して以来、音楽にある変化が起こった。この形態では、楽譜はすべての音楽情報を厳密には決定しえない。そのため、そこから生じる音楽や音は必ずしも作曲者が意図したものではない。作曲者は一音一音に細かくとらわれる事を放棄し、サウンドへの直接的な関与をゆるめることになる。さらに図形楽譜は多種多様になり、それを読み取る演奏者側は音を意図できない、あるいは意図しない事が求められ、生じる音楽は予想不可能となった。その結果、図形楽譜は、楽譜および音楽の既成概念に少なからず影響を与え、音楽(あるいは音)と楽譜の関係をあいまいなものへと変容させた。この作品は、このような楽譜と音楽との関係に注目し、それをさらに押し進めたものである。
『階段を降りるユリコフ』は、楽譜として映像を使った音楽作品である。映像を楽譜として読み取って、音に置き換え、再現した。身近な風景を映しとり、その映像の中の風景の秩序からあるルールを見つけ、今度はそのルールに従ってできるだけ正確に音に変換し、多重録音によって映像とシンクロナイズしている。映像のイメージと音楽の情緒を切り離して、素材をもう一度シンクロすることによってお互いの痕跡を打ち消し合い、そこから生じる意図的ではない音のつらなりを得ようとした。
『階段を降りるユリコフ』
Ⅰ 階段を降りるユリコフ 2'40
Ⅱ ハトのジーグ 2'52
Ⅲ 雲の測定 2'43
Ⅳ 間奏(影読み) 2'02
Ⅴ 特急淀屋橋行 3'42
Ⅵ 離さないで 2'17
Total: 16'56
【報告】