日本音楽即興学会(JASMIM)2011大会報告



【発表者】
堀上 みどり / Midori HORIKAMI


【要旨(大会抄録記載)】
クラシック音楽を長く学んだ人が、即興演奏を習得しようとするとき、なぜうまくいかないことが多いのだろうか。本研究は、クラシック音楽を学んだ後に、ジャズの即興演奏を習得しようとした筆者の経験といくつかの先行研究から、①日本の学校音楽教育、②即興演奏の習得方法、③即興演奏の意味について述べ、即興演奏習得の問題を考えるものである。


①に関して、子どもは本来、創造的、即興的であると仮定するSwanwickとTillman(1986)の研究を取り上げる。それによって、子どもの音楽的発達は、個人的であることと社会的であることを繰り返しながらレベルアップしていくことがわかる。研究対象になった子どもたちは、Tillmanの創造的、即興的音楽活動による授業を継続して受けているのだが、それが子どもたちの創造性、即興性を上の段階に進めていく土台になっていることは明らかだ。日本の音楽教育においては、第6次学習指導要領で創造的、即興的音楽活動をおこなうことが定められるが、実際にそのような音楽活動を展開できる教師が少なく、学校教育の現場で、創造的、即興的音楽活動があまりおこなわれていないのが現状である。


次に、②では、即興演奏はどのように習得されるのかについて考える。果たして、即興演奏は学習によって習得されるのかという問題について、Hall(1992)の、獲得(acquisition)と学習(learning)という概念について述べる。また、ジャズの即興の習得方法について、Berliner(1994)の研究を取り上げる。そして、それを可能にする音楽的能力とは何かについて先行研究から検討する。また、アメリカの大学における即興演奏の教育に関する問題点をLewis(2000)とMurphy(2009)の研究から述べる。


③では、記譜された作品を演奏することと、即興演奏との違いについて検討し、即興演奏の意味について、自己の音楽への信頼/時間論からの考察/自己実現としての即興という観点から考察する。それは、結果としての音楽ではなく、演奏のプロセスそのものに意味があるという考え方であり、演奏行為が、一部の専門家の為のものではなく、あらゆる人の自己実現としてあることを述べる。


これまで筆者は、即興演奏も作品の演奏と同様に洗練され、完成されたものでなければ意味がないと考えていたが、本研究から、即興演奏の意味を新たに見出すことができ、自分の即興演奏をいくらか肯定的に捉えることができるようになった。今後は、新たな価値観で即興演奏の習得に取り組みたい。