日本音楽即興学会 JASMIM

The Japanese Association for the Study of Musical IMprovisation
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NL39:JASMIM 2025年度学術大会開催報告 島田奈千花(広島大学大学院)

 今年度で第17回目を迎える日本音楽即興学会大会は,2026年2月21日(土),22日(日)の二日間にわたり,日本大学文理学部内ラーニングコモンズにて対面で開催されました。

「即興と認知・情報科学」というテーマが掲げられた今大会では,研究発表7件,ワークショップ3件が行われました。これらの発表は多様性に富み,実に豊かな内容でした。

基調講演では,大黒達也さんをゲストにお迎えし,「予測する脳と即興する身体:創造的感性を支える身体知の探求」というタイトルで,ご講演いただきました。大黒さんは,創造性が生まれるメカニズムについて,脳科学,神経科学,情報科学などの様々な領域を横断しながら研究をされています。講演の中では,「脳」「情動」「身体性」の特性とその関係性について,理論的枠組みが整理して示されたのち,認知神経科学,とりわけ「脳の内部確率モデル」にまつわるユニークな複数の研究例をご紹介いただきながら,音楽における即興の創造性の再定義が展開されました。特に印象的だったのは,即興における「ゆらぎ」と「場の知性」についてのトピックです。即興を「個人の創発的行為」としてのみではなく,文化的な伝達の他,学習のパターン,身体性といった「集合的確率構造」が基盤となって,それらがどのようにゆらぐのかについての予測が更新されていくことによって生み出される営みであるというように再解釈することができました。

そして,講演の後半には,音楽の予測誤差や不確実性の時間的な「ゆらぎ」に関する例として「身体感覚マップ」についての研究が紹介され,参加者は提示されたマップを目にしながら,音楽が心身に及ぼす影響に対し,盛り上がりをみせていました。音楽における即興の神経科学的なアプローチについては,これまでの私にはなかなか馴染みのない領域でしたが,LLMなどのAI技術との関連や,音楽と流行についての話題なども交えていただきながら,音楽即興の新たな一面を捉えることができ,非常に興味深い時間を過ごすことができました。

今大会では,オープンな空間の中で,それぞれの研究発表に対する積極的な質疑応答も展開されました。発表の合間にも,会員や来場者同士が気軽に語り合うようす(なかには,語りの中で突然セッションがスタートするようすも…!)が多数みられ,初参加の私でもリラックスして臨むことができた二日間でした。とりわけ参加者として印象的だったのは,ワークショップへの参加の体験です。参加者が手に取った〈かるた〉を起点に,新たな対話が生み出されたり,一枚の布の上で〈礫(こいし)〉とともに身体を律動させたり,手のひらに収まるほどの小さな楽器たちでガムランのセッションを行ったり…。「即興」の営みが秘める可能性を肌で感じることのできた,新鮮なひとときでした。

今大会の開催に際して,準備および運営を行ってくださいました実行委員長の北原鉄朗先生,そして実行委員会のみなさまのご尽力とホスピタリティに心から御礼申し上げます。